選択と集中

数年前に新聞の購読をやめました。新聞勧誘員とのトラブルが原因ではなく、新聞を毎日読むことをやめようと思い立ったからです。その代わり週に1回特集紙面が加わる土曜版と2週間に一度デジタル配信される特集紙面を購入しています。
中学生のころから新聞を読むのは日課で、新聞記事の切り抜きを取っておくような新聞好きでした。もちろん以前と違い、テレビは24時間放送されているし、海外のテレビ局だって見る事が出来る。ネットは新聞よりも早く、豊富な情報をタダ同然で提供してくれる。情報源は無数にあり、情報を集めようとすれば切りがありません。以前は情報を集める事が仕事でした。しかしネットやメールで24時間情報が入ってくるようになると、情報を集めているだけで時間が過ぎてしまいます。もちろん絶え間なく更新される情報に浸っている事で、人に遅れることなく時代の先端で生きていると錯覚し、束の間の安心を得る事も出来るでしょう。しかし本当にしなければならない事は、集めた情報から何かを感じ、何かを生み出す事です。
バブル経済崩壊後、業績不振に陥った多くの企業が“選択と集中”を合言葉に業務改革に取り組みました。言葉自体は明快ですが、何から手を付け、どう決断すれば良いのか、“選択と集中”を実行するのは容易いことではありません。同じく業務改革に取り組んだ企業も成功したところ、失敗したところ明暗は分かれるようです。
日本の戦後復興期から高度成長期へと、企業は安く質の高い労働力を使って幅広い分野に取り組み、規模拡大する事がヨシとされました。そしてそれは成功した。しかし90年代以降日本の賃金水準が上がり、国際化が進み、海外の国々がはるかに安く十分な品質の労働力を提供するようになると、幅広い分野すべてで競争しても、それぞれに専門の競争相手がいて取りこぼしが多くなりました。時代は変わったのです。本当に得意な勝てる(勝てそうな)分野でさらに腕を磨いて勝負しなければなりません。そのための“選択と集中”です。
情報を追い続けていると、漠然とした不安を感じる事があります。携帯電話が鳴るかもしれない、地球の裏側から重要なメールが入るかもしれない。しかし人本来の”感じ”、”考える”ためには立ち止まって、今ある情報と向き合う時間を作る事が必要です。
携帯電話をカバンにしまう。仕事のメールは夕食が終わったら見ない。一度入ってくる情報を止める。これが個人レベルの“選択と集中”の第一歩です。

 

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