ブラス Brass off(怒っている)

1996年イギリス映画
製作:スティーブン・アボット 監督・脚本:マーク・ハーマン

1970年代後半、学生時代の友人は「故郷で働きたい。」と言って、北海道の石炭鉱山会社に入りました。
高度成長の中で始まった炭鉱の閉山、しかし当時まだ北海道には炭鉱が残っていました。
この映画は英国の炭鉱町での話。
坑夫たちはきつい仕事が終わると、伝統あるブラスバンド・クラブに集い、仲間との演奏を愉しみ、喜びを感じています。
炭鉱が平然に向かう中、炭鉱の行く末よりも伝統あるブラスバンドに熱心な老いた父、家族の生活を守る事とバンド活動の両立に悩む息子。
映画は日々の現実と音楽という希望の間で揺れるバンド仲間たちを描きます。
炭鉱の閉山が決まり、解雇される坑夫と彼ら自身のために、メンバーは心を一つにして最後の舞台、ロイヤル・アルバータ・ホールで開かれる全英ブラスバンド選手権に挑みます。
あのパ〜ン、パカパ〜ンという響きと共に、それまでのバンド活動の集大成
として熱のこもる「ウイリアム・テル序曲」の演奏。
まずはYouTubeで聴いてください。
演奏を終えて、団長のダニーは語ります。

2週間前 このバンドの炭鉱も閉鎖されました。またも大勢が職を失った上に
大会に勝つ意欲 闘う意思まで失いました
しかし生きる意思すら失ったら・・・悲惨です。
皆さんは―
アシカやクジラのためには立ち上がる、でも彼等は・・・ごく普通の―正直で立派な人間です。・・・その全員が希望を失っているのです。
彼等はすばらしい演奏をします。
でも何の意味が?・・・

最後のクレジットタイトルには「1984年以来 英国で閉鎖された炭鉱は140、25万人近くが失業した」とあります。
ちなみに、友人の就職した北海道の炭鉱も90年代中ごろに閉山しました。

70年代以降失業者があふれ「沈みゆく帝国」と聞いていた英国が、鉄の女マーガレット・サッチャーの剛腕で復活する一方、国の政策で生活を壊される人々。 この映画はこの時代を描きますが、生活や希望を蝕む「体制」に対する怒りがこみあげて、自然に「このままじゃいけない!」という気持ちになります。

 

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