永島慎二

1937/7/8〜2005/6/10
私が永島慎二のマンガを観たのは中学に入った頃だったと思います。まだ永島マンガが分かる年頃ではありませんでしたが、その画風はどれも、それまで見た事のない新鮮な物で、訳もなく見続けました。
彼の描くマンガは青春期の私小説の様なもので、都会に住む青年の空虚な日々とその中に射す一筋の光といった話をセリフを抑え、絵で見せる魅力がありました。
代表作:フーテン、
  漫画家残酷物語、
  柔道一直線(原作:梶原一騎)

はえ

<はえ>はCOMだったか、ガロだったかに掲載された物を読んだと思います。全1ページを使ったビル街の絵で始まる展開は新鮮でした。

あるビルの屋上外壁の看板描きをしている二人にコマは移ります。
一人はせっせと仕事に精を出していますが、相棒は所在無げにビル街を見下ろし行きかう人や車を眺めています。
「おい、昼休みはすぎたぜ」という言葉にも「アア」と生返事をするだけです。ついに仕事をしろと促され立ち上がる男。
しかし、しばらくすると自分の周りを飛び回るハエに気を取られ、不安定な吊り足場の上でハエを追い始めます。
そして、ついにハエを捕えるのですが、その時男は吊り足場を踏み外してしまいます。
地上に落ちた男は即死。通行人は何で男が降ってきたのかも分からず、男を遠巻きにするばかり、という12ページの読み切りです。
最初の全1頁のビル街の絵(この頁は静止画でありながら、映像的な印象を持つ永島マンガの真骨頂ですが)から始まり、地上に落ちた男の手のひらのアップで終わる淡々としたスト―リーは、人生の意味などを考え出す時期には特別啓示的でした。

 

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