ジョギングを始めてしばらくすると海岸沿いのコースを1時間ほど走り続けられるようになりました。そしてハタッと気付いたのは若い人たちに追い抜かされることでした。
年齢の差、体格の差もあり仕方が無いことと思いつつ、軽快に横を駆け抜ける人たちを見ると、何が違うのだろうと疑問を持たざるを得ません。
違いは歩幅:ストライドと脚を交互に前に繰り出すスピード:ピッチの差でしかないのですが、ピッチにそれほどの差があるとは思えません。ストライドは背が高い人は当然大きいと思いますが、背丈がほぼ同じくらいの人にも追い抜かされるので、ストライドが違うとしか考えられません。
背丈が同じで、脚の長さが同じだとしてストライドが違うのはなぜでしょう。
いろいろ観察した結果は脚の運びが違うようです。
以前、谷川真理さんがある番組で「脚は回転運動を意識して動かす」とアドバイスしていました。この反対は脚が上下に動いて、体の上下運動が大きく、前方への推進力が無駄になってしまう、と話していたのを思い出しました。
確かに走っていると、体は前傾していても、足は真下の地面を蹴っている様で足への負担が大きいらしく、一度2時間を越えて走ったときには心肺能力的にはまだ走れたのですが膝の関節が痛くなって走り続けられなかったことがありました。

足が上下にしか動かず、ストライドが伸びずに、体の上下動が多くなり、早く楽に走れない。

問題は明らかになりましたが、脚の回転を意識して動かす方法は長い間分かりませんでした。脚を前後に大きめに動かせばよいのか、いろいろ工夫するのですがどれも動作に無理があります。こうして1年ほど私を追い抜いてゆく人たちを観察していると、ある事に気がつきました。

足の指に圧を感じて - 推力を前方に向ける

体を前に押すためには、体を前傾して推力を得るだけではなく、その推力を出来るだけ前方に向ける必要がある。
そのためには地面に着いている足は、体の直下ではなくできるだけ体の後方で地面を蹴る必要がある。となると、その時の足の指は地面と足の甲に挟まれて大きく曲がっているはず。

地面を蹴る姿勢を自分で見ることは出来ないけれど、足の指が大きく曲がった時の圧を意識すれば、適切な姿勢で地面を蹴っているかどうかを確認できるはずです。
そこで、走りながら足の指、特に親指が足の甲から45度以上曲がる時の圧を意識して地面を蹴るようにしてみました。
すると脚の運びが大きく変わりました。それまでは路面の砂を後ろに巻き上げるサッ、サッという音が強くしていたのが、しなくなったようにも思います。足が素早く前に出て体の上下動も減ったようです。

私のこの思いつきの正しさは、世界最速の男ウサイン・ボルトの走りからも確認できました。
彼の疾走写真を観察すると、後ろの足が地面を蹴る直前、足の指は足の甲に対して大きく曲がっています。
また現役時代の高橋尚子選手が、足の指先からつま先にかけては長年の走りこみでマメがつぶれ皮膚が非常に厚く硬くなっていると語っている映像を見たことも思い出しました。

このようなことから体の充分後方で足の指の曲がりを意識して地面を蹴れば、体は自然に斜め前方に押し出され、体が宙を飛ぶ距離が伸びて、ピッチを上げずにストライドが伸びて、楽に早く走る事が出来るのだと思います。

 
人は自分が走っている姿勢を自分で見ることはできません。人に見てもらって自分の姿勢を教えてもらえればよいのですが、それも出来ない場合、<姿勢のポイントを自分が感じられるものに置き換えて姿勢を確認する>のは実践的な方法で、いろいろな事に応用できるでしょう。

回転運動を意識して脚を動かす - 楽に速く走る

回転運動を意識して脚を動かすというと、マンガにあるような丸い円を描くような動かし方を思い浮かべてしまいますが、これでは脚の動きが大きくなるだけで無駄の多い不自然な動きになってしまいます。
はたして回転運動を意識するとは、どのような回転運動を考えれば良いのでしょう、これは長い間の疑問でしたが、ロンドンオリンピックでのウサイン・ボルト選手の走りを見ていて画像解析を思い立ちました。

いくつかの彼のレース映像から原画を起こし、アニメを作成。さらにアニメ動画毎の彼の足先を順に追って軌跡曲線を作成しました。 まず、左の画像の下の動作ボタンをクリックして、ランニング時の脚の動きを見てみましょう。
原画をゴール直前の映像から起こした事もあり、速度に乗った彼の脚の動きは無駄なくなめらかに動いています。素人がまねるの難しいようですが、お手本としては最高の走りっぷりでしょう。 さて、このままではまだ脚の動きが良く分かりませんから、右の軌跡ボタンをクリックして脚の動きに足の軌跡を重ねてみましょう。 回転運動といっても、丸い円ではなく半月に近い逆三日月形である事が分かります。
   
足の軌跡は足が体の垂直軸より後ろで地面をけった後、
  • 大きく蹴り上がり、腰近くまで上がります。
  • そしてそこから前方に向けて降りてゆき、
  • 体の前方、空中で最先端に達してから、
  • 地面に着地しています。
この軌跡から得られる足運びのポイントは、
  1. 足が地面をけった後、足の裏が天を向く程、大きく蹴りあげる。
  2. 腰の近くまで引き上げた足は、足が重さで落下する力を利用して前に大きく蹴りだしている。
事です、特に高く持ち上がった足が前方に蹴り出される動きは、ゴルフで教わった“上死点まで持ち上げた腕は、腕の重さで落下するように振り下ろし、体の中心で前に回転し、そのまま振りぬく”という打法にも通じる点を感じます。

 

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