別れるときは、畳一目づつ

先人の教え

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大学で文学を受講するまで、私は小説を「作り話」としか理解していなかったので、ノンフィクションやエッセーなどしか読みませんでした。特にエッセーは人生のノウハウを効率的に得られるような気がして、良く読みました

そんな中で感心した教えの一つが、吉行淳之助の表題の言葉です。吉行淳之助はテレビドラマにもなった美容師の吉行あぐりさんの長男として生まれた小説家です。もちろん小説だけでなくエッセーなども多く、私はそちらを愛読していたわけです。

吉行は恋愛について語ります、記憶の範囲ですが「男が別れるときは、相手に納得してもらう事が重要です。相手に動揺を与えるようなことは男として許されない。相手と向かい合う距離を一日一日、畳の一目づつ後退りして、気が付いたら隣の部屋にいた」という心掛けが必要だというのです。

知識は大人のつもりでも、実体験の少ない高校生には、人生の先輩の言葉は大きく、まだ必要もない事にまでえらく感心したものです。

全てを三段論法で効率的に処理する習性がついてしまうと、人間関係も理論的に処理できる、と考えてしまうのか吉行のように人間について深く関心を持つ人は減ってしまったように思います。

最近は一週間単位で新しい殺人事件がニュースになる時代ですが、男女の感情のもつれから、利害関係者間の争いまで、全てが解決するとは思いませんが、吉行の言う相手の気持ちのペースに合わせた「畳一目づつ」の心掛けが望ましいのでしょう