伊藤博文

体験レポート

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鳩山首相は93代の総理大臣だといいます。戦後の総理は何とか思い出せますが、戦前の総理となるとほとんど分かりません。そんな中では千円札に描かれた伊藤博文は初代総理だという事もあり記憶にあります。ハルビンで韓国人の民族運動家:安重根(アン・ジュングン)に狙撃され亡くなった事も教科書で読んだような気がします。

また、国道一号線を小田原に向かって走ると大磯に滄浪閣(そうろうかく)というプリンスホテルの別館レストランがあり、ここは伊藤博文の邸宅跡だと聞きました。その滄浪閣も数年前個人の所有になり、そのうちリゾートマンションになってしまうのではないか、と思っている事ぐらいが伊藤博文に関して知る事でした。

そんな伊藤博文ですが、今年が没後100年という事で大磯町郷土資料館で「滄浪閣の時代」展が開かれていました。会場は神奈川県の公園になっている城山(ジョウヤマ)公園の中にある資料館です。大磯は相模湾に面し気候が良いのですが、海岸から少し離れて国道一号線が走り、少し離れて東海道線があり、すぐに山が迫るような地形なので平地は少ないのですが、伊藤博文が居を構えたせいか、政治家や要人が好んで住んだようで、この城山公園も元は三井財閥本家の別荘だったといいます。

まず滄浪」のいわれですが、中国戦国時代の漢詩に由来して「何事も自然の成り行きに任せて身を処する」という意味だそうで、幕末から明治を勝ち抜いて初代総理になった権謀術策家という印象とは多少違った信条のようです。

農家の子として生まれた伊藤は高杉晋作に見出され攘夷運動に参加しますが、ロンドンへの密留学を機に攘夷運動の限界を感じ、開国論に転じたといいます。この一つの考えに固守しない変わり身、柔軟性は今の政治家にも期待したい資質でしょう。28歳で兵庫県知事に就任し、明治政府に深くかかわってゆきます。私生活では23歳で結婚し、3年で離婚。その1ヵ月後に梅子夫人と再婚、8ヶ月後に長女が生まれています。今回この梅子夫人の写真も何枚か見ることが出来ましたが、気丈な感じの夫人でした。

途中の展示を飛ばして、ハルビンで狙撃された時の着衣ですが、血痕は付着しているものの多量ではないので即死ではなかったでしょう。説明には打たれた時に「バカな事をして」と語ったとありました。

松永安左ヱ門

体験レポート

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親が購読していた「文藝春秋」で写真家:土門拳が各界の著名人を撮るという連載があって、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左ヱ門(マツナガ ヤスザエモン)を知りました。当時90歳ぐらいだったと思いますが、口を真一文字に結んで眼光鋭く人を睨みつけるような顔は印象的でした。

たまたま小田原に松永安左ヱ門が昭和21年から住んだ老欅荘(ロウキョソウ)が公開されているのを知り、訪ねてみました。移り住んだ昭和21年でさえ71歳ですから、老であるには違いないのですが数寄屋造りの荘への登り口に大きな欅(ケヤキ)の木があるのが命名の由来です。箱根に向けて国道一号線を登り始める辺りを右に入って、お寺が点在する板橋地区に松永記念館(小田原市郷土文化館分館)はあります。

松永安左ヱ門は明治8年に長崎の資産家に生まれ、15歳で東京に出て慶應義塾に学びますが、19歳で父の死に伴い郷里に戻り家督を継いで、家業をリストラして再生。23歳で銀行株で儲け、26歳で福沢桃助と商事会社を始めますが4カ月で破産。単独で石炭販売を始め成功、31歳で炭鉱経営に乗り出して失敗。さらに株の大暴落で大打撃を受け、そこへもってきて大阪の自宅は全焼。しかし35歳から電気鉄道会社、電気会社を各地に設立。昭和6年、57歳の時には5代電力会社の経営になんらか関与する事になった、というくらい波乱万丈の人なのです。

戦争直前に近衛首相から大蔵大臣に推挙されても、公職を拒み、反対していた電力の国家統制に伴い、実業界から身を引き茶事三昧で過ごし、戦後実業界に復帰し電源開発を強力に推し進め現在の九電力会社体制を構築した。という事で「電力の鬼」と呼ばれたわけですが、晩年は老欅荘で茶事と収集した美術品を愛好したと言います。

さて老欅荘ですが、記念館を入って庭園の池を巡っり、欅の大木のある一段高い場所まで階段を上がります。そこが老欅荘への昇り口で、下り龍(上り龍ではない)の石像の脇の階段を15メートルほど登ります。庵と庭の意匠は風格を感じさせるスキの無い作りですが、金持ちが贅を尽くして建てた、という感じではなく落ち着ける空間を作り出しています

われは凡人には松永翁のまねはできませんが、苦難に負けず、世事に固守することなく、元気に自分の道を追い求めたいものです。

「興味」の少ない人たち

社会問題

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この10年ぐらいでしょうか、若い人の中に食べ物にしても、遊びにしても、あまり欲を持たない人たちが現れているように感じます。私が青年のころには自動車を運転したい、美味しいものが食べたい、海外に行きたい、と強欲でお金がないのをシャクに思いました。日本は豊かになって住む場所も、食べる物にも普通は困らなくなりました。だから欲を持たなくても生きてゆけるのでしょうか?であれば無欲な煩悩の無い聖人が増えたという事なのでしょう。

しかし現実は食べ物にしても、遊びにしても「興味」を持たない、またはすぐ「興味」を失ってしまうのが原因のように思えます。言い換えれば物事への関心が少ないのかもしれません。これが正しければ、社会的生物である人間にとっては心配なことでしょう。

私はソフトウエア開発を仕事としていたので、仕事を離れたらソフトウエアと違った事がしたいと思っていたので、ファミコンに始まるホームコンピューターゲームは一切やった事がありません。しかし同僚の若い技術者は休み時間には必ずゲームをしていました。彼らは大人になってからゲームに触れたので現実の世界とコンピューターによる、いわゆる仮想の世界とのバランスは取れていたように思います。しかし、子供の時から仮想の世界で遊ぶ事が多くなると現実の世界に対する関心が少なくなるように思います。これが最近の「興味」の少ない人たちが増えた原因ではないでしょうか。

戦争ゲームなどが犯罪を助長する、いや欲求のガス抜きになるので犯罪を抑止する、などゲームの功罪が議論されます。しかし、コンピュータゲームの一番の問題は何度も同じ事が出来るので、確実に上達し、うまい下手の違いはあれども結局先が見えてしまう、事だと思います。「まっ、あれはこんなものさ」その内ちょっとやれば先が読めて、わざわざ手を動かしてゲームを続ける必要さえなくなる。その性癖が食べ物や、身だしなみ、住まい方などにも広がり、「まっ、どちらにしても大差ないさ」とわざわざ面倒な事をしようと思わない

この推論が正しいと証明する事は出来ませんがコンピュータが発達して、どんなに便利になっても、実体験を通した知識の蓄積は必要であり、いやそれに応じ必要性は増すように思います。

脱デフレ

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政府が「デフレ」を宣言したせいか、この所デフレスパイラルを暗示するような報道が多く暗い空気が年末を向かって広がっています

デフレといっても良い面もあれば、悪い面もあるわけで、問題が見えていないせいか、政府の中でも「金より頭を使った対策」という人もあれば、「今こそ大型補正予算」という人もあり対策がはっきりしません。問題は景気の回復に自信が持てない不安でしょう。

私は経済の専門家ではありませんが、一般人のレベルでもう一度このところの問題を整理して、脱デフレ策を考えてみようと思います。そもそもデフレかどうかよりも2001年のITバブル崩壊以後、景気が低迷している事が問題なのではないでしょうか。

おおむね円高続きで海外の物が安く買えましたが。企業は安い労働力を求めて海外に工場を移転し、日本国内の下請け会社は厳しいコストダウンを迫られ人件費を削り、正社員を派遣に切り替え、挙句の果てに雇い止めで労働者は職を失う。インフレかデフレかよりも、日本は波の乗れていないという感じです。

その波がいわゆるグローバリゼーションだと思います。日本はグローバリゼーションの中にあり、有利な影響も不利な影響も受けているのです。外国製品が安く買える、海外旅行がしやすいと有利な影響だけに喜んで、不利な影響の対策をしなければ、今まで競争にならなかった途上国との経済競争にも負けてしまいます。工賃だけを考えれば、中国、インド、ベトナムと競争にならない事ははっきりしていますし、最近は日本語という障壁も低くなってきています。これで品質が同等になれば、独自技術を持つ以外日本企業の生き残る道はありません。

グローバリゼーションの不利な面は、自分に都合の良い障壁を自分勝手に作れない事です。鎖国はできないのです、工賃は早かれ遅かれ安い方にあわされます。対策は高品質の物を早く作るか、独自な技術・製品で勝負するしかありません。または自分に都合の良い基準をいち早く制定し、市場を占有するというスマートな方法もあります。これはEUが使う手で、酪農製品などでもより厳しい衛生基準を作って域外からの輸入を事実上制限し、EC加盟国の権利を擁護しています。

脱デフレ策というと意見が割れますが、グローバリゼーションの不利な面の対策と考えれば、しなければいけない事が分かり易くなるでしょう。例えば町工場や商店でも独自な技術・商品を海外に輸出出来るような仕組みを作る。以前取り上げた海外からの観光客誘致。鉄道運行管理、ダム、水処理施設などの高品質なインフラ技術の輸出。また粗悪品排除を目的に[本心は国内産業の優遇策として]国内市場には一段高い品質基準を設定する、のも必要でしょう。是非独創的な景気対策を事業仕分け以上の熱を持って進めてほしいものです。

独立行政法人の役員公募

提案!

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何かと話題になる独立行政法人ですが、私たち庶民にはなじみが少なく、いったい何を、誰がやっているのか分かりません。そんな独立行政法人の役員の公募が今(1125日応募締切り)行われています。とはいってももちろん130以上ある独立行政法人のうち28法人の50名の役員(非常勤4名含む)の公募です。28法人はすべて既存の法人なので役員の改選だと思います。今まではどうしていたのか分かりませんが、行政刷新担当の仙石大臣は説明で「今般、独立行政法人改革の第一歩として、役員の公募を行うことといたしました。(詳細上図参照)」という事ですから、公募は政権交代によって初めて実施される事になったのでしょう

まず、どのような法人が役員を公募しているのか見てみました。北方領土問題対策協会に始まって、国民生活センター、平和祈念事業特別基金(以前紹介した平和祈念展示資料館の運営などを行っている)などがあり、今は何をやっているのか分からない日本万国博覧会記念機構や、得体の知れない自動車事故対策機構などもあります。一度、全ての独法がそれぞれ何をやっているのか確認してみたいと思いました

今回見てみたかったのは公募している役員の報酬でしょた。28法人のいくつかを見てみると役員の年収は1,300万円から1,600万円ほどです。多分同程度の社員数を持つ民間企業の役員の平均年収をもとに決めたのではないでしょうか。

本来、独法は「国が直接行うほどではないが、民間企業では事業化できない公共性の高い事業を効率よく行うために独占的に事業を委託する法人」となっているのですから、西欧でいう「ノブレス・オブリージュ(無私の行動)」ではありませんが、営利企業の役員とは違い、利益追求が目的でない独法の役員にこのような高額の年収を提示しては失礼なのではないでしょうか。

今年、政府はそこまで手が入れられなかったのかもしれませんが、来年はせめて役員報酬を勤続3034年男子サラリーマンの年収平均(2008年国税庁統計782万円)に合わせてはどうでしょうか。こうすれば報酬目当ての天下りは自動的に減るでしょうし、使命感に燃えた有為の士を集めることができるでしょう。また130以上の独法の全ての役員の報酬を見なおせば財政赤字削減にも役立つでしょう。

サンフランシスコに向かって何を思う

体験レポート

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先日、伊藤博文没後100年記念「滄浪閣の時代」展を見るために大磯の郷土資料館(神奈川県立大磯城山公園内)へ出かけたのですが、たまたま駐車場で国道一号線を挟んで反対側にある旧吉田茂邸の庭園が特別公開されていると聞き、急遽そちらを先に見る事にしました。

大磯は伊藤博文が梅子夫人の持病治療の為もあり移り住んだことから明治以降の政治家が多く邸宅をかまえました。吉田茂も養父の1万坪の別荘を戦後改築して1967年に死去するまで住みました。その吉田邸は大磯駅から車で小田原方向に10分程度走った所にあります。長い間西武鉄道の所有だったため、一般公開されていませんでした。

西武鉄道から神奈川県に寄付され、2012年の一般公開をめざして準備を始めた矢先の今年3月、突然の火災で本邸が全焼してしまいました。蒋介石から贈られた国宝級の屏風などの品々は本邸と共に焼失した、とはいいながら大金持ちの養父の遺産(現在の貨幣価値で100億円ともいわれるを)を使って造った庭園は高低差もあり、面積以上に広さを感じ見事です

国道一号線から邸内に入ると50メートルぐらい中に駐車場があります。そこからまた50メートルぐらい歩くと日米講和条約締結を記念して作った内門(当時の貨幣価値で2千万円、まさか官房機密費で作られたのではないでしょう?)があります。佐藤首相といえども直接本邸には入れず、ここで取り次ぎを待たされたそうです。

庭園の中の「心字池」を越えて丘を登ると吉田茂の銅像が富士を背に、講和条約を調印の舞台になったサンフランシスコを向いて立っています。松林の中を下る散歩道の途中には愛犬達の小さな石の墓標も残っていました。丘を降りると竹林が続き心字池にもどります。焼失してしまった本邸を再建しようという募金活動も始まっています。もちろん本邸が再建されると良いのですが、再建には莫大な費用がかかるでしょう。また焼失してしまった歴史遺産は復元しようがありません。中途半端な復元では意味わありません。であれば、残された庭園を早く一般公開し確実に保存管理できるようにすべきではないでしょうか。庭園は見事なだけでなく、吉田茂の散歩道を歩くと、吉田茂のその時の気持ちに思いをはせる事が出来るという付録があります。

オバマ演説

社会問題

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先週、バラク・オバマ大統領が来日しました。

「中国は3泊なのに、日本は1泊」という事が大きく扱われていました。何を尺度にするかですが、人口でいえば13億人程の中国、日本の10倍です。一人あたりで考えれば日本人は3倍以上もオバマ大統領の時間を占有したわけですから、宿泊日数の長さを問題にするのはあまり意味はないでしょう。それよりも演説はどうだったのでしょう。「鎌倉の大仏より、抹茶アイスがお気に入りだった」などの、断片紹介や招待客のコメントを伝えるだけで、演説内容をそのまま伝えるテレビ番組はなかったように思います。もちろん30分以上は掛ったのではないかと思う演説ですから、瞬間芸報道に慣らされた日本のテレビ局では演説を落ち着いて放送する事は出来ないのかもしれません。

そこで日曜日の朝日新聞に掲載された全文日本語訳を読みました。1ページ全段一杯の演説は確かに長いですが、論理の段階的な展開や、具体例を挙げた主張は明快で、節の長さも適切で日本語で読んでも流石に演説を得意とする大統領だと感じます。反論しにくいように注意した言い回しで、言いたい事を言っています。例えば、

  1)アジア太平洋での我々の取り組みは、揺るぎなくかつ活性化した日米同盟を通して大いに定着していくことだろう。

2) 日本は世界の舞台でより大きな役割を演じるようになり、(中略)アフガニスタンやパキス タンへの(中略)追加支援の約束をするという注目すべきリーダーシップを示した。

3) 両国政府が達した沖縄駐留米軍の再編合意の履行のため、合同の作業部会を通じて迅速に進むことに合意した。

4) 勢力圏づくりを競うのではなく、協力圏づくりを深めることで、アジア太平洋は前進していくだろう。

この後も、中国への姿勢、気候変動、核不拡散、北朝鮮問題、アジア重視の姿勢と続くのですが、特に経済政策については力が入っています

5) 今回の景気後退が我々に教えた重要な教訓の一つは、経済成長を米国の消費者と、アジアの輸出だけに頼ることの限界だ。

6) (経済成長に向けた)新戦略は、貯蓄を増やし、支出を減らし、金融制度を改革し、長期的な赤字と借り入れを減らす(中略)我々は建設し、生産し、そして世界中に売り出すという輸出に重点を置く(中略)これらの雇用創出、風力発電の風車や太陽光発電パネルから、あなた方が日常的に使う技術にまでに及んでいる

7) 世界中の他の国の市場開放は、米国だけでなく、世界の繁栄に極めて重要だ。(中略)世界中の市場を開放し、輸出を増やす

予算のムダ削減を進めるだけでなく、日本も同じように強い成長戦略を打ち出さないと周回遅れになってしまうのではないか、というのがオバマ演説を読んだ私の一番の印象でした。

細部が大事

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箱根は紅葉真っ盛りです。

箱根湯本から塔ノ沢、大平台と坂を登るにつれて、渓谷沿いの木々の色合いが豊富になります。今回はこの紅葉を見るのも目的でしたが、仙石原にある「アルベルゴ バンブー」というイタリアンレストランに行ってきました。宮ノ下で箱根裏街道に入り、仙石原で道を左に少し入った場所にあります。

1996年からの営業となっていますが、建物は100年以上前からの洋館という雰囲気です。オーナーの説明では映画「ゴッドファーザー」のウェディングシーンに触発されて、人が集い楽しい時間を過ごせる“家”を作りたいと、8年の歳月をかけて完成したそうです。仙石原はもともと海軍と陸軍の高級将校用に開発された別荘地だと聞きましたが、この建物はその時代からのものではなく、15年ほどしかたっていない新築という事になります

ダイニングは丸テーブルが15ほど入る天井の高い広間で、ゆったりした気持ちになります。漆喰壁にはフレスコ画が描かれていて、これを見るのも楽しみです。昼食は2,000円台から7,000円台まで各種のコースがあり、中間のコースを試しましたが、前菜も豊富で美味しく、メインのパスタは味・食感ともに絶妙でした。箱根は沼津の魚貝、三島の野菜、御殿場の肉・乳製品など新鮮な素材が手に入るので美味しい料理が出来ると言いますが、その料理の舞台の雰囲気もまた格別でした

黒沢明は「赤ひげ」の撮影の時に、映画には映らない薬ダンスの中にまで漢方薬を入れたそうです。彼は細部を大事にする事によって真実味が上がる、という考えだったようです。洋風趣味のレストランはたくさんありますが、なんとなくサマにならないと感じるのは、細部を適当なもので間に合わせてしまうからでしょう。8年の歳月をかけて完成したというオーナーの熱意には敬服します。また家具だけでなく窓・扉・鎧戸、メインゲートや内部階段の手すりなどの鉄細工、古い時代の様式を守って製作する職人がいるヨーロッパの社会の厚みを羨ましく思いながら食事を終えました。何事も細部が充実すると豊かになるようです。

カープール

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政府の高速道路無料化政策は、1)高速道路の渋滞を招き経済効率を悪化させる。2)鉄道、高速バス、フェリーなど競合交通機関の経営を圧迫する。などの反対の声が強く、多少旗色が悪くなっています。本来高速道路が無料であれば、一般道路との役割分担が可能となり年の効率が向上する、という事をアメリカのフリーウエーを例に以前述べました。この観点からすると、現在の議論は「変化」に対する拒否反応であって、「変化」をプラスの方向に利用するための現状打破のための議論ではないように思います。現在指摘されている問題は、だから高速道路は無料化すべきではないという結論に向けて議論するのではなく、それらの問題を解消ないし、低減して高速道路の無料化によって社会を活性化するという方向で議論したいものです。

問題2は今までは競合交通機関が利用されていたのに、高速道路が無料化されると利用者が減るというという反論ですが、人件費の安い東南アジアと競争しなければならない製造業などの他産業を考えれば自分勝手な文句としかいえないでしょう。渋滞が激しくなり定刻運行が出来なくなって営業に支障が出ているという高速バスを除けばまずは自己努力が必要でしょう。

問題1については、高速道路が無料になった事により純粋にどの程度利用者が増えるのかは分かりませんが、利用者が増えた場合の対処法は既にあります。アメリカでは多くのフリーウエーにひし形が路面に書かれたカープールというレーンがあります。これは一般的には二人以上の人が乗っている車のみが乗り入れられるレーンで、他のレーンが渋滞していても、制限速度以内で走る事が出来ます。目的地近くでフリーウエーから降りるためにカープールから事前に出なければならないので、他のレーンが混んでいる場合は注意が要りますが、渋滞解消には大きな効果があります。高速バスもこのレーンが利用できるので、カープールがあれば高速バスに対する高速道路無料化の弊害は無くなるでしょう。

高速道路無料化といっても対象は地方の不採算高速道路が対象なのですから、土日の何処まで行っても1,000円政策とは異なります。例えば飛行機や鉄道で地方の観光地に行った場合、周辺の高速道路が無料であればレンタカーを借りて数か所の観光地を回ることも可能でしょう。旅行先での移動範囲も広がれば北海道、東北、北陸、中国・四国、九州といった一観光地ではない地域の活性化になるのではないでしょうか。

「変化」には不安が付きものですが、良さを信じて工夫すれば(という事は「変化」を繰り返せば)今までと違った効果が得られると思います。

なるほど

体験的営業技術

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お客様との商談で、お客様と意見が食い違った時にどうするか、営業手法に違いの出る場面です。1)ある人はお客様を怒らせてはいけないので、お客様の意見に反論せず聞き流す。2)ある人は自分の考えが正しいという自信もあって、「いや、違います。」と言って反論を始める。3)ある人は、意見の食い違いが広がるのを避けるため、話題を変える。

相手はお客様ですから、どんなに自分が正しくても相手に嫌われては、商売には成功しないでしょう。従って2番は適切とは言えないでしょう。だからと言って1番のように聞き流すだけでは、相手からの信頼は得られません。3番のように意見の食い違いをウヤムヤにしては、相手との関係は深まりません。

この場面でしなければいけない事は、相手に自分とは違う考えもある、と気付かせることです。ですから「それは違う、あなたは誤っている」という必要はありません。「あなたは間違っている」と言われて、謙虚にどこに誤りがあるのだろうと反省できる人はほとんどいないでしょう。防衛本能が働いて、反論に反論しようとします。これでは争いがエスカレートして、会ってくれなくなってしまうかもしれません。

このような時には、まず何でも良いから「なるほど」と肯定的な相槌を打つのが良いでしょう。それも「な~ぁるほど」というような抑揚で思いもよらない事だという感じを出すと良いでしょう。肯定的な反応ですが、相手の考えに同調したわけではありません。あくまで貴方の考えが分かりました、という意味の「なるほど」です。議論の上では大した意味ありませんが、肯定的な反応で相手を落ち着かせる事が出来ます

そして一呼吸置いた後、「しかし、このような時はどうなるのでしょう」とか「でも、これはどうなりますか」というような反対の考えに結び付く疑問を提示すればよいのです。これで相手が誤りに気が付けば万々歳ですが、気が付かなければ「こんな事も考えられるでしょう」と反対の考えをほのめかせれば、目標は達成です。日を置いて、相手に確認すれば考えは変わっているハズです。万一考えが変わっていなくても、お互いに前回より歩み寄った立場で意見の食い違いを議論できるでしょう。

ムダをなくそう

提案!

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選挙の投票で訪れた公民館で「誰でもできるわが家の耐震診断」という冊子を見つけました。わが家は特に大きく痛んだ所はありませんが、古い家なので地震への備えには関心があります。A4判見開き6ページの立派な冊子で、財団法人日本建築防災協会編集、国土交通省住宅局が監修しています。おまけに市の建築指導課発行のビラも入っていて、力が入っています。

曰く「この診断法は一般の木造住宅の所有者、居住者向けに作成されたもので、自らがパンフレットに従い診断することで、お住まいになっている住宅のどのようなところに地震に対する強さ、弱さのポイントがあるかなどが分かるようになっています」と有り難い説明がありました。

冊子を開くと、10問の問診があります。「建てたのはいつ頃ですか?」という第一問では19816月以降は1点、以前や建築時期がわからない場合は0点です。二問目は「今までに大きな災害にも回れた事がありますか?」、以下「増築について」、「傷み具合や補修・改修について」と続き、「屋根葺材と壁の多さは?」や「どのような基礎ですか?」といった、建物構造に関する質問で終わります。

そして、診断です。評点合計10点、満点の場合の判定・今後の対策は「ひとまず安心ですが、念の為専門家に見てもらいましょう」となっています。『うっ、何かおかしい』と思って評定89点を見ると「専門家に見てもらいましょう」、7点以下は「心配ですので、早めに専門家に見てもらいましょう」です。

つまり、どちらにしても専門家に見てもらう事を勧めます、というのがこの冊子が伝えるメッセージのようです。地震対策が目的であれば当たり前の事を伝えるだけの冊子を製作・配布するのではなく、信頼できる診断専門家の紹介や診断料の基準設定などを行うべきではないでしょうか。写真やイラストを使い多額の費用をかけただろうこの冊子は財団法人の存在を正当化するため、内容よりも冊子を作ることが目的になっていたのではないでしょうか。だとすれば税金のムダ使いの根は深いと思います。

政府の事業仕分け作業が始まりました。「弁護士抜きの不法裁判だ」という反論もありますが、税金が子育て・高齢者支援などの耳触りの良い目的を掲げた天下り法人の人件費に消えていく事態は見過ごせません行政及び各種法人の評価基準を「多くの予算を使う」から即刻「より少ないコストで、より大きい利用者満足を達成する」に切り替えないと事態は改善の方向に向かわないのではないでしょうか。

オウム返し話法

体験的営業技術

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「聞き上手になりなさい」とは、良く言われることです。確かに営業でも、信頼される営業は自分が話す量より、相手に話させる量が多いようです。反対に「立て板に水」の営業マンの成績が良いとは限りません。

聞き上手になりたいと思っても、相手がしゃべってくれない人の場合、沈黙が怖いのでついつい自分でしゃべってしまって、打ち合わせ時間は終わってしまったという事があります。またはYesNoの返事を聞くだけの打ち合わせになってしまい、相手の返事に確信が持てなくなる事があります。

寡黙な人にしゃべらせる上手い手はないか。沈黙の恐怖に耐えて自分からは話をしない方法はないか。YesNoだけでない相手の考えを確認する方法はないか。いろいろ考えて試したところ、良い方法はオウム返しでした。例えは何かの商品の説明をしたとします。いろいろ利点を説明して好きか、嫌いか、必要か、必要ではないか、聞こうとします。

「いかがですか、ご説明したようにいろいろ利点がありますが?

「…ピンとこないなぁ…」

ここで、普通は「いやぁ、失礼しました。ご説明が悪かったですか」とか「やはり、こういったものは必要とされていませんか」とか、自分から喋ってしまう事が多いでしょう。しかし自分から喋ってしまうと、話は次につながりません。ここは相手に喋ってもらわなければなりません。そこで、

「ピンとこない」と音程を下げてオウム返します

自分の喋った事をオウム返されると、十中八九は言葉を変えて喋ってくれます。この場合では「あそこの説明の意味が分からない」とか「私はそういう事は興味ないし」とか、何がピンと来ないのか説明してくれます。そこでこちら側の説明をするなり、再度「興味ない」とオウム返せば「だって、これこれこうじゃ意味ないでしょ」などと、相手の考えに徐々に近づく事が出来ます。もちろん「では、何ならピンとくるのですか」と真正面から質問しても良いのですが、友達づきあいでない限り「そんなこと君に教える義理はない」で話が終わってしまう危険があります。

相手の神経を逆撫でず、相手の懐に忍び込んで、相手に沈黙の恐怖を与えて喋らせる。そのためにはオウム返し話法が役に立ちます

西伊豆-戸田

体験レポート

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今流行りのB級グルメではありませんが、学校の歴史教科書には出ていないけれども、少し細かく歴史をみると気になる出来事や足跡を訪ねる歴史探訪のバス旅行に西伊豆の戸田(ヘダと読みます)に行ってきました

戸田は伊豆半島の西側の付け根、沼津から海岸線を30分ほど南に下った所にある小さな漁港です。なぜここがB級歴史史跡かと言えば、日本の近代造船発祥の地だというのです。経緯は多少長くなりますが、1)ロシア皇帝の命を受けて幕末との国交交渉に日本に来たプチャーチン艦長一行が、1年あまり幕府にたらいまわしにされた揚句、やっと伊豆の下田(伊豆半島先端部の東側) で交渉を始めた翌日、安政の大地震が起こり、津波によって乗ってきたディアナ号が大きく破損2)鎖国中のため目立つ場所では修理できず、駿河湾内の強い海流の為に入江の入口に大きな砂嘴(さし:沿岸流によって運ばれた砂や小石が入江の一方の端から細長く堤状に堆積してできた地形)が出来ていて、修理作業を隠しておける戸田で修理する事になる3)伊豆西海岸を北上中、強まった風と波の為、(船は500人乗りとはいえ帆船)戸田港に入れず、駿河湾を富士川河口付近まで流され、多数の手漕ぎ漁船で戸田にまで曳航中に、風が再度強まり沈没4)陸路戸田に辿り着いた一行は寺に仮住まいしながら、日本人船大工を指導して洋式帆船(ロシア人艦長はヘダ号と命名)を3カ月余りで完成させた。といいます。この時の技術が日本海軍の軍艦に、そして日本の造船世界一につながったわけです

史実としては、この他海難事故救援という側面からロシアと戸田住民の交流、また今でも焼津に次ぐ漁獲量を誇る戸田の漁業など興味深い事があるのですが、今回の一番のお気に入りは戸田港から望む富士山でした。大きくそびえる富士はいろいろな所に絶景がありますが、海の上に現れる富士山は趣が変わっています。入江の奥からは砂嘴で狭まった入江の入口に富士山を見る事ができます。

ダム建設では建設推進理由に観光開発が必ず挙げられます。しかしダムがどの程度人を引き付けるのでしょうか。黒部ダムには行った事があります。しかしダムを観たのは10分か15で、印象に残ったのは扇沢から室堂、美女平への周辺の自然です。自然は見る場所を変え、時期が変わると表情が変わります。人工物は自然ほどには表情が変わりません。人を集めるためには地道にB級史跡を発掘・整備したり、その場でしか見られない自然を守る方が良いのではないでしょうか。

活性酸素

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太古の昔、地球の大気は水蒸気と二酸化炭素だった。光合成をする植物が発生して酸素が徐々に増え、酸素と糖質からエネルギーを作り出す動物が発生した。とは中学の科学で知った事です。

「それまで地球上に存在していなかった酸素を体内で利用するようになった。これは地球外生命体が地球上の酸素を処理できなかったそれまでの生命体の細胞に入り込んだ、と考えられる。これがつまり細胞の中のミトコンドリアです」と、子供の時日本のロケット開発の先駆者糸川英夫博士がテレビで語っていたのを思い出します。

さて、要するに長い進化の中で生物は酸素に順応してきたわけです。しかし順応できていないのが活性酸素というもので、体内の生化学反応の過程で発生したり、大気汚染やタバコの吸気で発生する電子的に不安定な酸素です。もうだいぶ前になりますが、格闘家のアンディー・フグという人が急性白血病で突然亡くなった時。急性白血病の原因は抗酸化酵素が活性酸素を処理しきれなかったためだろうと聞きました。しかし “活性”という語感からしてなぜ体に害になるのか私には良く分かりませんでした。

先日生命科学の話を聞いていて、大まかに活性酸素の毒性が納得できました。まず活性酸素という物質は電子が一部欠けており、不安定な物質です。だからこそ体内の生化学反応で重要な役割をはたしている。通常は体内の抗酸化酵素が不要になった活性酸素を中和するので、害がない。しかしバランスが崩れて活性酸素が増え過ぎると、活性酸素は安定化しようとして細胞膜の分子の電子を無理やり取ってしまう。活性酸素は安定するが、電子を取られた細胞膜分子は隣の分子の電子を横取りして、安定化しようとする。これが連鎖的に細胞膜分子の中で起こり、電子を横取りしあった細胞膜の一部は膜としての組成を維持できなくなり、膜が壊れてしまうというのです。この事はフラスコに血液の希釈液を入れ、タバコの呼気をブクブクと23分入れるだけで鮮やかだった血液の色がどす黒く変色する事からも確認出来るというのです。

政府がダバコ税の変更を検討しているそうです。税収不足だからと言って酒やタバコなどの嗜好品の利用を政府が制限するのはおかしいという意見もあります。しかし摂取量によっては健康にも良い酒とは違い、生命科学のレベルで害のある、まだ人類が順応出来ていない活性酸素を発生してしまう事が分かっているタバコの摂取を、減る方向に政府が誘導するのは悪い事ではないでしょう。大幅な価格見直しは新規利用者を作らない効果はあると思います。

プロアクティブ

体験的営業技術

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技術者から営業として入社した外資企業では“プロアクティブ”という事がたびたび言われました。“プロ(前の)”+“アクティブ”ですから、直訳すれば「事前に行動を起こす」といった意味になります。何を売るにしても、待っていては売れません。かと言って、自分から働きかけるのは勇気がいります。企業に入って会社の製品を店頭で販売する新人研修で大阪に派遣されました。なかなか売れず、生きた心地がしませんでした。しかしお陰で店頭でのビラ配りから、看板作り、戸別訪問と「慣れ」てゆき、3か月終わった所では例年並みの売り上げには達しました。

技術者という立場でも展示会での商品説明や、営業サポートとしてのお客様との打ち合わせなど、新人研修の時の経験は大いに助けになったのですが、一方的な説明で終わって販売に結び付かない事は多かったと思います。その内、当然「先を読む」ようにはなりました。先を読んで、お客さんの聞いてきそうな事を説明書の中に事前に入れておく。目的がハッキリしている、事前に分かっている技術打ち合わせの場合は、このやり方は有効です。これは一種のプロアクティブしている事になるでしょう。

しかし、営業となると事前にお客様の関心を2、3予測してもお客様の関心がそこに無ければ、役に立ちません。予測の数を増やすといっても、予測ばかりに時間をかけるわけにはいきません。では営業のプロアクティブとはどうすればよいのか。私の理解では、予測した事は一度忘れてお客さんの話を良く聞き、理解したお客様の関心と自分の予測とのズレをその場で埋めていく事だと思います。もし、その場でズレを埋める良い案が見つからなければ「申し訳ありません。そこまでは考えていませんでした。XX日までに検討して出直します」と言えば良いのです

相手の関心を予測するのには限界があります。正確に予測しようとすると外れる確率も高くなります。相手から予想外の反応が返った時にお手上げでは何にもなりません。それよりもある幅を持った方向を考えた方が、外れない確率が高くなるでしょう。お客さんのより高い関心(期待感)が何かを掴み、自分が販売する製品が持つ可能性とその期待感を結び付ける、そのための準備をする事が営業のプロアクティブだと思います。