Profile : 高度成長期に学生時代を過ごし、オイルショックで就職に苦労するも、右肩上がりの80年代をモーレツ社員の一員として働き、気がつけばバブル崩壊、希望退職で外資企業に転身して14年。
「世界の中の、明日の日本と日本人」をテーマにしている56歳。
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グラフの色を決める
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
仕事でプレゼンテーションを作る時に、内容で悩むのはもちろんですが、グラフを作る時のグラフの色をどうするかで悩みます。
例えばエクセル(Excel)で5、6種のアイテムの数量を比較する棒グラフを作ろうとすると、各アイテムの色を指定する必要がありますが、ウインドウズ標準の赤・緑・青(RGB)カラー指定機能で色合いの良い5、6色を指定するのは大変です。どうしても派手になったり、同系色で違いが目立たなくなったりしてしまいます。
Excel2007では色の組合せを含めたグラフのスタイルを選べるようになっていますが、どれも好みに合いません。絵具を使うのであれば試行錯誤で好みの色を作り出す事ができますが、RGBの値を0から255の数値で指定するデジタル方式では赤、青、緑以外の組合せ色(黄色はR=255、G=255、B=0)はどのようなRGB配分で作れるのかが分かりません。
ということで、私が利用しているのは試行錯誤の上自分で作った12色の色相環パレットです。これを使ってベースの色を決め、その色相に対して彩度を決め、明度をいくつか選んで各アイテムの色にします。
黄色から赤、紫までの暖色は活発で元気な感じがでますが、ビジネスのプレゼンテーションには向かないように思います。私は黄緑から青、青紫までの寒色か緑系の中間色を好んで使います。
彩度が高いと鮮やかでポップ、低いと渋く落ち着いた感じになります。
ポイントは同系色の中で色を選ぶこと。色相の違う色を組み合わせるのは極力避け、彩度と明度もどちらか一方は固定するほうが安全です。どうしても色相の違う色を組み合わせたい時は、RGBの数値の総和はおおむね光の量に対応するので、RGBの総和が同じになるような色を選ぶ事です。結果的に赤と黄色や青と紫は組み合わせ出来なくなります。
一度RGB指定と色相環の関係を理解しておけば色の悩みが減り、本来のプレゼンテーションの組み立てと内容作りに集中できます。国際交渉
ちょっとした対策
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麻生首相が温室効果ガス削減の中期(2020年までの削減)目標を発表しました。首相は「低炭素革命で世界をリードする」、「極めて野心的なもの」としていますが、発表された05年比-15%という目標値は経済・業界団体が主張する-4%と環境団体が主張する-21%~-30%を足して2で割ったように見えます。
それはさておき、今回の発表は首相自身が「日本の考え方を示した第一歩」と言うように、今後の国際交渉でさらに厳しい削減義務を負わされるのではないかと心配されています。ですから目標数字自体より、今回の発表が今後の交渉の布石として正しかったのか、の方が重要に思います。
この観点から発表内容を振り返ると、首相は次の二点を強調していました。
1) 排出枠購入などによる削減分を含んでいない「真水」の目標。
2) 2005年比の-15%は欧州諸国連合の目標を上回る。
しかし、この2点は他国と違った基準を持ち出して「日本の目標の方が立派だろう」と言っている様なもので、インパクトはありません。現実的には発展途上国の排出枠を日本など発展国が購入しなければ、発展途上国は環境対策費用を捻出できませんし、欧州諸国連合が使っている1990年比で見れば、今回の日本の目標は-8%でしかありません。(日本は90年代温室効果ガスの排出が増加した)
他国(他人)と交渉する時に、基準が違っていれば、交渉は基準合わせから始めなければなりません。交渉でリーダーシップを取りたいと考えているのであれば、最初に同じ基準で、インパクトのある論理で相手を圧倒しなければなりません。“足して2で割る”方式では交渉はリードできないでしょう。そう考えると今回の会見で次の点を配慮してほしかったと思います。
A) 排出権枠購入を含めた目標にする、合わせて排出権購入の枠組みを提案する。(例えば発展途上国に対する技術支援を排出権と交換する)
B) 主要な排出国の米国、中国を協議に参加させるのが重要なのだから、日本の目標設定を主要排出国の目標と関係付ける。(米国、中国がこういう目標にすれば、日本はここまでやる用意がある、というような)
「未来を救った世代になろう」という首相の考えには同感なので、今後の交渉の成功を祈りたいと思います。なお会見18分、質疑応答を含め全体33分の内容は首相官邸ホームページの「麻生首相の演説・記者会見等のページ(下記URL)」で確認できます。
日本の海運
ちょっとした対策
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「海運・航空と環境問題」という特別展示を4月19日まで行っている横浜馬車道の日本郵船歴史博物館に行ってきました。特別展示は地球温暖化防止に対する主に海運としての取り組みを紹介する地味なものでしたが、日本郵船の社史を通し近代の日本海運の歴史を紹介する常設展は実物展示、ビデオ解説、船の模型を交え見ごたえのあるものでした。
日本郵船は船舶数規模、売上高日本1位、そして世界第2位の海運会社ですが、三菱財閥の岩崎弥太郎が1870年に始めた海運業に端を発するそうです。しかしその歴史は波乱万丈で、そもそも創業が開国後アメリカ、イギリスの海運会社に独占されていた日本の海運を自らの手に取り戻す決死の覚悟だったようです。そして独自の海外航路を開設し、それまで独占によって押しつけられていた法外な運賃を適正化し、日本の貿易による発展の前提を作り、以後日本の発展と共に世界の船会社としての地位を確立していったそうです。
日露戦争では、日本郵船の貨客船が九州西方沖でバルチック艦隊をいち早く発見し、東郷元帥率いる連合艦隊が圧勝する事が出来た、という事で東郷元帥からの感謝状が展示されていました。まさにソマリヤ沖の海賊が…などというレベルではなく海運と戦争は切り離せない状態が続いたようです。そして太平洋戦争、なんと所有船舶222隻のうち185隻(83%)を失い、社員も43%の5,312名が亡くなられたそうで、壊滅的状態になった訳です。
しかし、その状態から我々の知る高度成長を経て現在にいたる復活を遂げた訳で、並々ならぬ努力があっただろうと思います。そしてそれに比べれば100年に一度と言われる経済危機も、何が問題で、何をしなければいけないか、冷静に考えなければと思いなおします。
こうして常設展から特別展に移り地球温暖化防止なのですが、全世界の海運が排出するCO2は世界全体のCO2排出量のわずか2.7%しかなく比率は少ないのですが、スクリューの推進効率を高める援助装置を開発したり、海流に乗って航行し燃料を節約する等の努力を続けているそうです。そしてこの後日談として16日に2030年を目指したスーパーエコシップが発表されました。これについては次回に回しましょう。
三つあります
ちょっとした対策
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仕事で一緒になった米国人と話していて勉強になった事があります。
何でそのような話になったかは思い出せないのですが、会議などで何かの問題について意見を求められた時、どう話し始めたら良いだろうかという話でした。
私は当たり前に、話が食い違わないようにまず理解した問題を要約して、確認を取った上で…と言ったのですが、彼は全く違った考えでした。
彼曰く「まず、それには3つのポイントがあります」と言う。そして一つ目の話をしながら二つ目として何を言おうか考える、一つ目の話で間が持たなくなったら「二つ目には」と言って話題を続ける、と言うのです。
三つ目はどうするの?と聞くと、「二つ目までに相手との接点が見付けられなければ駄目だ」と意に介しません。そこで相手が「三つ目は?」と聞くこともあるだろうと言うと、
「あ、三つ目、ん~何だったかな、次回までに思い出す。」とでも言うさ、というのです。人を馬鹿にした話のようですが私はその後、社内の会議などで彼がこの手を使ったのを目撃しました。
あまり不用意に乱発してはいけませんが、「三つあります」は確かに効果があります。日本人はとかくダラダラと話しがちですが、これでは何を言っているのか分からなくなります。相手の印象にも残りません。
意見の内容も大事ですが、意見を発言する時の明快な話口は自信ある印象を相手に与えるので重要です。その為に「三つあります」で話し始めるのは、多少まとまりの無い意見でも発言を型(フォーマット)にはめられるので効果があります。これが二つではさびしいし、四つでは間が抜けます。これはそれほど難しくなく二つ半ぐらいの話でも三つに再分割すれば良いのです。
レポートなども米国人はフォーマットを重視します。あたかもフォーマットが良ければ内容も良い、と考えているようです。外見だけが重要なわけではありませんが、確かに外見も重要と考えた方が良いかもしれません。
ASAP
ちょっとした対策
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ASAP、英語でAs soon as possibleの略で、直訳すれば何かをお願いする時の「至急お願いします」という意味です。日本人はこれが好きのようで、参考配布(CC)された若い人のEmailにはよく見かけます。しかし日本語に訳した時の意味は「可能な限り早く」でも、欧米人と仕事するようになってASAPはあまり効果がない事に気が付きました。例えば「仕事上の返事をASAPでほしい」とEmailで書いても、こちらが思うように素早い返事をもらえた事がありません。そういう事が何度か続き、逆に彼らのEmailを見直してみると、同じような場面でASAPと書いてある事がほとんどありませんでした。
いろいろ考えた末ASAPは彼らの感覚では「可能になったら早目にやって」くらいの強さしかないのだろうと理解しました。そして彼らの書き方を真似て、それ以後はASAPの代わりにby the end of this week(今週末までに)とか、by your EOB tomorrow(明日のあなたの終業時までに、EOB=end of business)など、期限をはっきりと書くようにしました。これは上手くゆきます。返事をくれる可能性は高いですし、万一返事がもらえなかった時に催促しやすくなります。
欧米人に「阿吽の呼吸は通じない」と言いますが、阿吽の呼吸にも種類があって、相手が自分の問題意識、時間的切迫感を察して、こちら側の思うように動いてくれるはず、という自分勝手な阿吽の呼吸を訪米人に求めるのは、もともと無理です。だからASAPと書いたのに、梨のツブテだと言って腹を立てるのはナンセンスです。そうではなくもともと自分のお願いしたい期限とその理由をはっきり説明し、協力を求めると良いでしょう。
英語が出来ることと、英語で仕事が出来る事は違うと言いますが、外国人と仕事をする時には、日本人の感覚を前提にするのではなく、相手の外国人の感覚や生活習慣を確認しながら、話を進めると良いようです。
ホワイトカラーの生産性
ちょっとした対策
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今から15年ほど前に外資企業に転職して、戸惑ったことの一つは、仕事への取り組み方の違いです。私の取り組み方と、一緒に仕事をする外国人のそれが食い違っていました。たとえば顧客向けにプレゼンテーションするために米国本社から人を呼ぶような場合、私はプレゼンテーションを解説する事になるので、来日する米国人に事前に英語のプレゼンテーションを送ってくれと頼みます。「分かった。出来次第メールで送る」とは言ってくれるのですが、待てど暮らせどプレゼンは届きません。ほとんど来日する機内でプレゼンを完成させ、日本に着いて顔合わせた時に受け取るのが常でした。「何で米国人は約束通りに準備しないのだろう、自分だったら1週間前にはほぼ最終版を完成するのに」と初めのうちはイライラしました。
しかし、ある時プレゼンの完成が本番直前になった事があり、あきれ返って彼に聞きました。すると「私はプレゼンの1分前まで内容を良くしたいんだ」という返事でした。彼は元々「一週間前にはほぼ最終版を完成する」などとは考えていませんでした。彼は、もちろん素材集めは十分やるのですが、納期までに十分な品質のものを一気に作る、その為に限られた時間の中で集中する、という取り組み方です。それに対し私は早めに全体像を八、九割がた作り、上司・先輩の意見を聞いて手直しを重ね、完成するという取り組み方です。時間はかかりますが、良いものを作るためには残業も厭いませんでした。日本企業では一般的な取り組み方だったと思います。
日本のホワイトカラーは勤勉なのに生産性は低いと言われています。「上司よりも先に帰れない」「職場に長くいる事で勤勉さをアピールしたい」などの職場の空気は変わってきていると思いますが、国際基準の生産性を目指すためには仕事の取り組み方自体を「時間をかけて良いものを作る」から「限られた時間の中で期待されるものを作る」に切り替える、そしてその為の技術を磨き、自分なりの工夫をする必要があると思います。
早い段階から試作品を作り、手直しを繰り返せば品質は良くなるでしょうが、時間を掛けたからといって最高のものが出来る保証はありません。場合によっては試作版への思い入れから発想が試作版を越えられなくなることもあるでしょう。ホワイトカラーの生産性向上には「限られた時間を効果的に使って最善を尽くす」という訓練が有効だと思います。またこれにより複数の仕事を同時に進めたり、仕事一辺倒でない時間の使い方が定着する事も期待できるでしょう。
失敗と対策
ちょっとした対策
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私がチームを率いて仕事を始めた25年ほど前、「何が原因だったと思う?」と仕事での失敗について聞くと、黙り込んでしまう人がいました。私は同じ失敗を繰り返さないために、失敗の原因に気付けば何か改善が出来ると考えていただのですが、まじめで優秀な技術者の一人だった彼の沈黙の原因が分からず、上手くいきませんでした。
しかし後年、同じようなケースで別の人が沈黙の理由を「どのように改善したら良いか、考えがまとまらなくて…」と言いました。その時私は、彼らは原因究明と対策立案を混同していた、しっかり原因を究明せずに対策を検討するため、効果のありそうな対策がなかなか見つからず、返事が出来なかったのだろうと気がつきました。実践教育の機会の少ない日本では、失敗すること自体まれで、失敗の原因を分析し、それに基づいた有効な対策を考えるという気質が身につかないのではないでしょうか。
一方、外資の会社で外国人と仕事をするようになって彼らのプレゼンテーション力には驚いたわけですが、特に(前任者だけでなく自分の失敗を含めて)失敗を踏まえ、新しい対策の有効性を訴える手法は勉強になりました。外国で黙っていたら勝負に負ける、とはよく言われる事ですが、議論の場では自分の成功体験だけを語るわけにはいきません、自分の失敗も利用して自分の考えをアピールしなければいけないこともあります。
技量では負けない日本人も、議論で負けてしまっては仕方がありません。自分の失敗を正しく語れるような気質を身につけることが、議論やプレゼンテーション慣れしている外国人と同じ土俵でビジネスするために必要になるでしょう。
チェックリスト
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
「あっ、ケイタイ忘れた!」「定期券がない!」朝のいそがしい通勤途中で、はっと気が付く不甲斐なさ。今から家に戻っていては予定の電車どころか次の電車にも間に合わない。時々こういう事があります。今日は朝急いでいた、昨日帰ってきたときにケイタイを別の所に置いた、背広を着替えた、原因はいろいろあるでしょう。こういった失敗をすると、今度こそ慎重にやろうと決意するのですが、暫くすると別の原因で同じような失敗を繰り返してしまうのです。
「間違えをしないようにしよう。」という決意は正しい対策だとは思えません。人間に完全を期待するのは精神論で、精神論が良い結果をもたらすのは非常にまれです。人間は間違えを犯すものだという前提に立って、間違えを未然に防ぐ方法を考えるほうが正しい対策ではないでしょうか。
仕事場面でケアレスミスをした人に、「対策は?」と聞くと、ブスッとしたまま、黙り込んでしまう事があります。不注意だったと認めているのに、いつまでも責めて、一回のミスで私をいい加減な人間だと決めつけて、意地悪な人だな、と思っているのかもしれません。しかしそうではないのです、ケアレスミスだから、今度から注意しますから、というのは別の意味で精神論です。ケアレスミスにも対策を講じなければ、ミスは繰り返します。
対策は簡単です。ミスを排除する動作、事項を記述したチェックリストを作れば良いのです。そのリストに基づいて必要事項を動作で確認すれば、うっかりケイタイを忘れることも、仕事でケアレスミスをすることも防げます。リストを作るなど子供だましだと思う人もいるでしょう。しかし飛行機の操縦など、人命に関わる仕事は精神論ではなく、全てこの方法で完全を目指すのです。自分は慎重で、間違えをしないと過信するのではなく、一度失敗したら失敗の原因を整理してチェックリストを作り、それを使って動作で確認する。また私はこのようにして、自分を完全な人間にしようという精神論が不要になったのでずいぶん気が楽になりました。チェックリストで確認する事を忘れない限り二度と失敗する事がないのですから。
正しい事の見直し
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
行政改革論議の中で引き合いに出される事の多い『私のしごと館』という若者を対象にした施設が京都府にあります。これは職業体験の機会、職業情報、職業相談等の提供の為、厚生労働省が2003年に開設しました。この施設の存在意義についてはいろいろ議論され、おおむね無駄であるとの判断から廃止されるものと思われます。
ではなぜこのような施設が造られてしまうのでしょう。二度と同じような施設を造らないための予防策はないのでしょうか。まずこの施設がなぜ作られたのか調べてみました。施設の設置根拠は雇用保険の目的の一つ、労働者の能力開発にありました。雇用保険法(旧失業保険法)には大きく二つの目的があります。いわゆる1)失業等給付と2)雇用安定・能力開発事業です。1番目の目標が分かり易いのに比べ、2番目の目標は、具体的で無いためいくらでも拡大解釈が出来そうですが、それ自体崇高な目標であり真っ向から反対するのは難しいでしょう。
しかし雇用保険法の前身である失業保険法が制定された60年ほど前と違い職業訓練を目的にした民間の学校、施設が充実している昨今、国が若年者の能力開発を行わなければいけないとは思えません。その余裕があるのであれば失業給付を手厚くするなど他にやるべき事があると思います。つまり『私のしごと館』などの施設の意義を議論するだけでなく、なぜそのような施設が出来てしまったのか、その存在の根拠になっている法律が現在の状況に照らして今でも正しい事なのかを見直して、必要に応じて法律を修正しないとまたいつか無駄としか思えない施設を作ってしまう可能性があると思います。
社会には未来永劫、無条件に正しい事など無いのですから、常に何がどういう理由、どういう条件で正しいのかを見直す必要があるでしょう。
選択と集中
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
右肩上がりの経済成長が終わり、グローバル化の中で企業の競争が激化すると「選択と集中」が重要と言われるようになりました。しかし経済成長期に定着した多角経営志向切り替えるのは容易ではないようです。「選択と集中」の反対にある戦略は「総合化」でしょう。関連する事を何でもまとめる。それ自体考え方としてはおかしくないし、適した状況下では効果的でもあったでしょう。
要するに競争が国内企業だけで数が限られており、技術革新のスビードも今ほど早くなかった時代には関係する事業を取り込んで規模拡大する企業の利益になったのでしょう。しかしインターネットと携帯電話によってグローバル化した現在、たとえ総合力を持った大企業でも革新的な技術や新しいビジネスモデルで参入する新興企業にいつ足元をすくわれるか分かりません。そこで大企業といえでも本当に自社が強い分野、伸ばしたいと考えている分野を選択し、それに集中しなければ、特定の分野に専念している企業との競争に勝てなくなってきています。だから「選択と集中」が必要なのです。
個人の仕事でもこの「選択と集中」という考え方は必要になっています。好奇心が大きすぎるのかいろいろな事に手を出すのですが、みな中途半端になって十分な成果が出せない。人に頼まれると断れず、掛かり付けの仕事中に別の仕事を始めてしまう。いくつかの仕事を同時並行で行わなければならない時には、それぞれ1時間単位の目標を決めて、時間で仕事を切り替えるという方法があります。頼まれ事を引き受ける時には仕事の緊急度を確認し、仕掛り中の仕事との優先度を事前に依頼者と相談するのも必要でしょう。どんなに優秀な人でも能力は無限ではありません。能力を有効に生かすためには「選択と集中」が必要です。
チェンジと安定
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
10年ほど前、私のところのセールスマン募集に、自分の日本語力をわかってほしいと原稿用紙2枚ほどの小論文をもって米国人(仮名をマイク君としましょう。)が応募してきました。海外のソフトウエアを輸入販売するのが私の部門の仕事ですから英語の読み書き、会話力が条件でしたが、彼の場合は逆にお客様との商談などでの日本語力が心配だったわけです。流石に米国人、相手の心配を見通して小論文を、それも手書きの、漢字も使った論文を用意してきたわけです。
テーマは米国人(西欧人と言っても良いと思いますが)と日本人の違い、でした。マイク曰く「米国人が一番大事にする考えはチェンジ、変化です。何かやってみる、上手くいかない、変えてみる、上手くいかない、変えてみる、上手くいった。これが大事です。」「これに対して、日本人は安定を求めます。変えること嫌いです。だいたい『前例がない』です。」
マイクはこの二つの国民性の違いを知っている自分こそこの仕事には最適だ、と力説しました。米国の大学で日本語を学んだという彼の日本語力にも感心しましたが、米国と日本の違いを変化と安定(不変化と言ったほうが良いかもしれません)としたマイクの分析は学生離れしたものでした。たぶん良い参考書を見つけたのでしょう。
確かに日本人は「変えること」に神経質ではないでしょうか。できれば昨日と同じでいたい。昨日と違う事をやるのは気が進まない。一度立てた目標に向かい、死に物狂いで努力するのは得意ですが、ちょっと立ち止まって周りを見渡し、立てた目標が今でも重要なのか考えて、目標自体を変えるという事が苦手のようです。30年、40年前の需要予測による無駄な公共投資や大企業の過大な先行投資など、計画実施担当者は計画立案時の環境がどのように変化しているかに関わりなく、計画の達成度だけに血眼になる。いろいろな場面で見られるように思います。
一方、オバマ新大統領のお陰もあってチェンジは時代のキーワードのように言われますが、「変えること」自体が良いわけではありません。変えるためには変えなければいけない原因を正しくつかみ、より正しいと確信する方向へ変えなければいけません。思いつきでいろいろやってみても正しい方向に向かうという保証はありません。継続性を踏まえて必要な変化を決定しなければなりません。
私は「変化と安定」は対局する考えではなく、変化し安定し、安定する中で変化する。ある期間毎に変化と安定が繰り返すのが、あるべき姿だと思います。日常の仕事の場面では、何か問題が起こると直ぐに「それではこうしなければ」とあわてる人がいますが、今までやってきた事をそっちのけにしては、今までの努力が何だったのか分からなくなります。新しい取り組み方に切り替える前に、今まで進めてきた事が、新しく発生した問題を含めて対応可能か否かを判断する必要があります。対応できるのであれば進めてきた事をより強力に、スピードアップして進めればよいし、対応できない理由がはっきり見つかれば全てを中断して、現時点で行うべき最適な対応策を決定し、頭を切り替えて全力でその対応策を実施しなければなりません。最悪なのはいろいろ手を尽くしながら結局いつまでも出口が見つからないことです。
派遣と社員教育
ちょっとした対策
ビジネス » 職業
私の仕事のソフトウエア輸入販売の中で、いく人かの「派遣」技術者の方に仕事をお願する機会がありました。デモンストレーションやトレーニングを行ったり、新バージョンをテストして結果をレポートするといった、目標に合わせて自分で計画を立て、判断をしながら進める仕事でした。
20代半ばの、大学を卒業し派遣会社に就職、業務経験は2、3年という人たちです。以前から中堅技術者を即戦力として派遣する会社はありましたが、大学を卒業して実務経験のないまま派遣会社に入社して「派遣」で仕事をする、という労働形態はつい最近のものではないでしょうか。もちろん派遣会社 (良心的な会社) も社内で基礎教育を行ったり、派遣の前に受託業務などでトレーニングして最低限の技術知識は習得させて、派遣しているようです。
そして派遣技術者の仕事ぶりを見ていくうちに、私が新入社員として会社に入った約30年前と違い非常に厳しい環境で働いているなあ、と感じました。もちろん派遣先で働くという不安定さもあるでしょう、しかし、それよりも1時間、1時間を金額換算され成果を求められるのを常に意識するのは大きな負担、焦りにつながるのではないでしょうか。落ち着いて考えるという余裕はありませんから、さしあたりの技術知識を頼りに手当たり次第やってみるしかないのです。私が30年前、新入社員の時に先輩に質問し、問答の中で疑問を解消しただけでなく、技術知識の上に考え方や仕事の進めかたを会得したようなチャンスは彼らにはほとんど無いでしょう。
「派遣」という労働形態は日本企業の競争力を支えた一つの柱、社員教育を容易に破壊してしまったようです。会社は1時間、1時間お金を払っているのだから即戦力を求め、派遣者は深く考ず、さしあたり手を動かしてしまう。これでは定型業務をこなす事は出来ても、工夫が必要な非定型の業務はいつまで経ってもこなせるようにならないでしょう。
これは由々しき事です。これでは日本の製造業の創造性、競争力は急速に衰えるでしょう。「派遣」という労働形態が必要とされる以上以前OJTと呼ばれていた業務の中での教育、具体的に言えば「考え方」や「仕事の仕方」を若い、明日の日本の製造業を担うだろう技術者に伝えなければいけない。若い技術者の中にも仕事における方法論を模索している人は多いはずだ。これが私が自分の経験や自分なりの工夫、考えをまとめてみようと考えた切っ掛けでした。何か興味の持てる、何か参考になる事が見つかれば幸いです。